平成26年度 ECO技術協会技術講演会 アンケートによる質問への回答 |
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講演1「不溶化・水処理資材としての酸化マグネシウム」への質問と回答 |
講師 : 九州大学大学院 農学研究院 教授 和田 信一郎 氏 |
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Q1.酸性土壌に対して酸化マグネシウムを用いることの効果や問題点について? |
一言で言えば、十分量添加すると不溶化効果は期待できるが、不経済だ、ということになると思います。
これまでの研究結果を総合しますと、酸化マグネシウムによる不溶化・安定化は、主として、
1) 土壌のpHの上昇
2) 酸化マグネシウムの水和によってできる水酸化マグネシウムによる吸着
によって起こると考えられます。酸性土壌に酸化マグネシウムを添加するとMgO+H2O → Mg(OH)2という反応で水酸化マグネシウムができますが、水酸化マグネシウムはMg(OH)2 → Mg2+ + 2OH-という風に溶解して水酸化物イオンを放出します。この水酸化物が土壌の酸性を中和するために土壌pHは徐々に上昇します。土壌pHが9以上になるまでの間は、水酸化マグネシウムは溶解してしまいます。pHが9を超えると溶解反応は不完全になり10になると生成した水酸化マグネシウムはもう溶解しなくなります。
上記2)の機構による不溶化を期待するためには、土壌pHが少なくとも9以上になるように添加する必要がありますので、酸性土壌の場合には必要な添加量が多くなり、不経済です。 水酸化マグネシウムは残存していない状態でも、pHが高くなれば土壌自身による重金属イオン吸着が促進されます。この機構による不溶化は、pHを上昇させるための資材の種類にはよりません。したがって、炭酸カルシウムや消石灰などの安価な資材によってpHをある程度上昇させておき、その後に酸化マグネシウムを添加する、というような工夫をする余地があると思います。ただし、高レベルのフッ素汚染土の場合には最初に石灰系資材を添加すると、(理論的には)酸化マグネシウムによる不溶化が遅延する可能性があります。
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Q2.実際の現場での酸化マグネシウムを用いた汚染対策工事の施工方法を教えて欲しい。)
(酸化マグネシウムを撒いて、すき込むようなイメージでしょうか?事例等あれば・・ |
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Q3.不溶化のメカニズムは、複雑な機構がからみあっている様ですが、施工前のトリータビリティーテストでは、不溶化対象物質の溶出量のみを尺度に行って良いのでしょうか? また、室内試験と施工現場では環境が異なるため、可能であれば現場試験を行った方が良いのでしょうか?トリータビリティーテストの方法や留意点等を教えて頂ければ幸いです。 |
あまり自信をもってお答えできませんが、基本的には、ほかの資材による不溶化の場合と大きく異なることはないと思います。 ただし、Q1と関係しますが、酸性土壌の不溶化を酸化マグネシウムを用いて行った場合、水酸化マグネシウムの溶解のため間隙水の塩濃度(主としてマグネシウム)がかなり高くなることがあります。室内試験では、降水がありませんので、養生期間中そのままの間隙水濃度が保たれます。 しかし現場では、降水があった場合には間隙水の塩類が溶脱されて塩濃度が低下します。このことが不溶化に影響(不溶化対象によってプラスの影響もあればマイナスの影響もある)する可能性があると思われます。 |
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講演2「土壌汚染の措置・対策技術について」への質問と回答 |
講師 : 一般社団法人土壌環境センター技術委員長 日笠山 徹巳 氏 |
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Q1.(揚水・注水の繰り返しによる重金属汚染地盤の原位置浄化工法において) 揚水時の沈下等については問題なかったのでしょうか?
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紹介した事例は、周囲を封じ込めた範囲において地下水の揚水と注水を繰り返し行い、地下水中の特定有害物質を回収するものでした。その揚水及び注水のサイクルは、概ね揚水3日、注水4日の1週間程度でありました。また地質的にも細砂層を対象としたものでありました。 お問い合わせの揚水時の沈下については、現地計測等を行っておりますが、現状においても問題は生じておりません。 |
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